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破産管財人の任意売却による所有権移転登記

破産管財人とは
破産管財人とは、破産手続きにおいて破産財団に属する財産の管理及び処分する権利を有する者をいいます(破産法第2条12項)。つまり、破産申立者の財産を代わりに管理し、処分する人のことです。
裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、一人または数人の破産管財人を選任します(破産法第31条1項)。
通常は、破産者及び破産債権者と利害関係のない弁護士が選任されます。
破産管財人による不動産の任意売却
破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属します(破産法第78条1項)。つまり、破産者の所有する不動産は、破産管財人が管理及び処分する権利を有します。
一方、破産管財人が不動産の任意売却を行う場合には、裁判所の許可を得なければなりません(破産法第78条2項1号)。
破産管財人は、裁判所の許可を得たうえで、債権者と担保権抹消等の交渉をし、不動産の任意売却を行うことになります。
破産管財人の任意売却による所有権移転登記
破産管財人の任意売却による所有権移転登記の申請書の記載例は以下の通りです。
登記申請書の記載例(抜粋)
登記の目的 所有権移転
原 因 年月日売買
権 利 者 (住所)(氏名)
義 務 者 (住所)(氏名)
(住所)破産者〇〇破産管財人
弁護士〇〇 ※1
登記識別情報の提供の有無:無し ※2
登記識別情報を提供できない理由:
許可書を添付します
添付書類 登記原因証明情報
印鑑証明書 ※3
住所証明情報
代理権限証明情報 ※4
許可書 ※5
※1義務者欄には「(破産者の)(住所)(氏名)」「(住所)破産者○○破産管財人 弁護士○○」と併記します。
※2許可書を添付するため登記識別情報(または登記済証)の提供は不要です。
※3裁判所書記官の作成した破産管財人の印鑑証明書を添付します。この印鑑証明書には有効期限の定めはありませんが(登記研究709号)、破産管財人の資格を証する書面は発行後3ヶ月以内のものでなければならないため(不動産登記令第17条1項、同第7条1項2号)、資格を証する書面と印鑑証明書が一体となっている場合には発行後3ヶ月以内のものが必要となります。
※4代理権限証明情報として「破産管財人の資格を証する書面(選任審判書等・発行後3ヶ月以内のもの)」のほか「委任状(司法書士など代理人に手続きを依頼する場合)」を添付します。
※5 裁判所の不動産売却の許可書を添付します。
登記原因証明情報の記載例(抜粋)
登記の原因となる事実又は法律行為
(1)令和○年○月○日、○○地方裁判所○○支部は、破産者○○○○(以下、乙という)の破産管財人 弁護士 ○○○○(以下、丙という)が乙所有の本件不動産を任意売却する許可決定をした。
(2)令和○年○月○日、株式会社○○○○(以下、甲という)と丙は、本件不動産につき売買契約を締結した。
(3)この売買契約には、売買代金全額の支払時に本件不動産の所有権が移転する旨の特約がある。
(4)令和○年○月○日、甲は丙に対し、売買代金全額を支払った。
(5)よって、同日、本件不動産の所有権は乙から甲に移転した。