043-310-3310
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めとは

監査役とは
監査役は、取締役(会計参与設置会社においては取締役及び会計参与)の職務執行を監査します(会社法381条1項)。
監査役の監査の範囲は、原則として「業務に関するもの」と「会計に関するもの」にわたります。
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め
公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨」を定款で定めることができます(会社法389条1項)。
平成27年5月1日に施行された改正会社法により、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定め」がある株式会社は、その旨を登記しなければならなくなりました(会社法911 条3項17 号イ) 。
登記簿の記載から、その株式会社の監査役の監査の範囲を把握できるようにする趣旨です。
株式会社の設立日により監査役の監査の範囲に関する取扱いが異なります
株式会社の設立日が、「平成18年5月1日より前」であるか「平成18年5月1日以降」であるかにより、監査役の監査の範囲に関する取り扱いが異なります。
1.平成18年5月1日より前に設立された株式会社
平成18年5月1日より前に設立された株式会社においては、次の条件をすべて満たす株式会社の監査役の監査の範囲は「会計に関するもの」に限定されるものと「みなされます」。
①平成18年5月1日当時、資本金が1億円以下かつ負債の合計額が200億円未満である
②非公開会社である
③監査役の監査の範囲に「業務に関するもの」を付与する定款変更をしていない
④監査役会及び会計監査人を設置していない
2.平成18年5月1日以降に設立された株式会社
平成18年5月1日以降に設立された株式会社の監査役の監査の範囲は、監査役の監査の範囲を「会計に関するもの」に限定する旨の定めがなければ、「業務に関するもの」及び「会計に関するもの」にわたります。
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定めるには
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することができる会社は、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)に限られます(会社法389条1項)。
また、業務監査権限を有する監査役がいる株式会社において、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを新たに設けるときは、株主総会の特別決議によって定款変更の手続きを行う必要があります(会社法466条、309条2項11号)。
定款の記載例
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めの定款の記載例は以下のとおりです。
第◯条 当会社の監査役の監査の範囲は、会計に関するものに限定する。
第◯条 当会社の監査役は会計に関する事項のみについて監査する権限を有する。
登記手続き
1.登記申請の時期
平成27年5月1日以前に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあった株式会社、または会計に関するものに限定されているとみなされている株式会社については、平成27年5月1日以降に初めて就任(重任)または退任する監査役の登記と併せてその旨の登記を行えばよいとの経過措置があります。
平成27年5月1日以降に設立する会社が監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めをした場合には、その設立登記においてその旨を登記します。
平成27年5月1日以降に新たに監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めをした会社は、その定めをしたときから2週間以内に登記をしなければなりません(会社法915条1項)。
したがって、上記のルールに則れば、理論上は平成27年(2015年)5月1日から監査役の最長の任期である10年の経過後、つまり、令和7年(2025年)5月1日以降は、登記簿を確認することによりすべての株式会社の監査役の監査の範囲が把握できることになります。
2.登記懈怠に注意が必要です
上記の「平成27年(2015年)5月1日以前に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあった株式会社、または会計に関するものに限定されているとみなされている株式会社」について、少なくとも令和7年(2025年)5月1日の時点で、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の登記(以下、「会計限定登記」という)をしていない場合には、登記懈怠が生じていることになります。監査役の変更登記を期限内にしている場合でも、この旨の登記が漏れている場合がありますので注意が必要です。
3.登録免許税
会計限定登記は、登録免許税は1万円(資本金の額が1億円を超える会社は3万円)です。ただし、監査役の変更の登記と同時に申請する場合には、登録免許税はあわせて1万円(資本金の額が1億円を超える会社は3万円)となります。
登記申請書の記載例(抜粋)
平成27年5月1日以降に、株主総会にて、新たに監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めをおく定款変更決議を行った場合の登記申請書の記載例です。
登記の事由 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨
登記すべき事項 別紙のとおり
登録免許税 金1万円 ※1
添付書類
株主総会議事録 1通 ※2
株主リスト 1通 ※2
委任状 1通
別紙
「役員に関する事項」
「資格」監査役の監査の範囲に関する事項
「役員に関するその他の事項」
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある
※1 登録免許税は1万円(資本金の額が1億円を超える会社は3万円)です。ただし、監査役の変更の登記と同時に申請する場合には、登録免許税はあわせて1万円(資本金の額が1億円を超える会社は3万円)となります。
※2 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めをおく定款変更決議を行った「株主総会議事録」及び「株主リスト」を添付します。なお、平成27年5月1日より前から定款に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがある会社がこの旨の登記を申請する場合には「定款」を添付します。また、平成18年5月1日より前に設立した会社で監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあるとみなされている会社は、「定款」または下記の「証明書」を添付します。
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあることを証する書面-1登記記録の記載例(抜粋)
平成27年5月1日以降に新たに監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款に定めた場合の登記記録の記載例です。原因日付として株主総会において定款変更決議を行った日付をもって「年月日設定」とされます。
役員に関する事項(監査の範囲を会計に限定する旨)なお、平成27年5月1日以前より定款に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがある会社は、登記原因である「年月日設定」は登記されません。
取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の登記との兼ね合い
1.取締役等の責任免除規定
取締役が2名以上いる監査役設置会社において、取締役等の会社に対する責任につき、一定の条件を満たしているときは、その責任の一部を取締役の過半数の同意(取締役会設置会社においては取締役会の決議)によって免除することができる旨(以下、「責任免除規定」という)を定款に定めることができます(会社法426条1項)。
2.責任免除規定と監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めとの兼ね合い
1.における「監査役設置会社」とは、業務監査権限のある監査役がいる会社のことをいうことから、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがある会社は、責任免除規定を定めることはできません。
一方、平成27年5月1日より前は会計限定登記をする必要がなかったことから、その会社の監査役の監査の範囲を問わず、責任免除規定に関する登記を申請することができていました。
このような事情から、すでに登記されているものの中には、その会社の監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されているのにも関わらず責任免除規定の登記がされていることがあります。
したがって、平成27年5月1日以降に会社が会計限定登記を申請するときは、「原則として」取締役等の責任免除規定を廃止して、その登記を抹消する必要があります。
3.責任免除規定と監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めが両立しうる場合
一方、会社法が施行された平成18年5月1日より前に責任免除規定を設けていた会社の中には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定するものとみなされている会社があります。このような会社については、責任免除規定と監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めが両立し得ることから、平成27年5月1日以降に会計限定登記を申請するに際して、責任免除規定の登記を抹消する必要はないことになります。したがって、責任免除規定の登記の原因日付(年月日設定)に注意して登記手続きを行うことが肝要となります。
特例有限会社の監査役
監査役を置く旨の定款の定めのある特例有限会社の定款には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあるものとみなされます(整備法24条、会社法389条1項)。
この定めを廃止して監査役の権限を拡大することはできないものと解されており、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨は特例有限会社における登記事項とされていません(整備法43条1項)。