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スマート変更登記の申出のすすめ(法人編)〜住所等変更登記の義務違反を避けることができます

住所等変更登記が義務化されます
2026年(令和8年)4月1日より、住所等変更登記の申請が義務化されます。
これにより、不動産の所有者(所有権の登記名義人)は、氏名若しくは名称又は住所(以下「住所等」といいます。)について変更があったときは、その変更日から2年以内に変更の登記の申請をしなければならず(不動産登記法第76条の5)、正当な理由なくこれを行わなかった場合には、5万円以下の過料に処せられることがあります(同164条2項)。
義務化前の住所等の変更についても対象となります
一方、住所等変更登記の申請の義務化前(2026年(令和8年)3月31日以前)に住所等を変更した場合であっても、変更登記をしていない場合には義務化の対象となります。
「2026年(令和8年)3月31日以前」に住所等を変更した場合には、義務化の施行日から2年経過する「2028年(令和10年)3月31日」までに住所等の変更登記の申請をしなければならず(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条7項)、正当な理由なくこれを行わなかった場合には、5万円以下の過料に処せられることがあります(不動産登記法164条2項)。
法人の方が義務違反を避けるならスマート変更登記の申出を
住所等変更登記の義務化を控え、2024年(令和6年)4月1日より、令和6年4月1日において既に所有権の登記名義人であった法人からあらかじめ法務局に対して一定の事項を申し出る(法人識別事項の申出、以下「スマート変更登記の申出」という)ことにより、登記官の職権で法人識別事項(会社法人等番号)が登記され、加えて、2026年(令和8年)4月1日からは、所有権の登記名義人が会社法人等番号を有する法人であって、その会社法人等番号が所有権の登記に記録されているときは、登記官が職権で法人の名称又は住所の変更の登記をしてくれる画期的な制度がはじまりました。
スマート変更登記の申出をすることにより、申出の後に本店・主たる事務所の住所や会社・法人の名称に変更があり、商業・法人登記について変更の登記をした場合には、申出をした不動産について登記申請をしなくても、登記官が職権で住所等変更登記をしてくれるため、義務違反に問われることがなくなります。
法人の方でスマート変更登記の申出ができる方は、「令和6年4月1日において所有権の登記名義人として記録されている法人」のみとなります(所有権の登記名義人の法人識別事項が既に登記されているときは申出できません)。
オンライン又は書面により、「会社法人等番号の申出」をすることで、会社法人等番号(法人識別事項)が登記されます。
なお、令和6年4月1日以降に所有権の名義人となる法人の方については、登記の申請書に、新たに所有者となった方の名称、住所に加え、会社法人等番号を併せて記載して申請することで会社法人等番号が登記されます。
スマート変更登記の申出がされた場合の登記の記録例
スマート変更登記の申出がされた場合の登記の記録例は以下のとおりです。
スマート変更登記(法人)登記簿スマート変更登記のメリット・注意点
スマート変更登記のメリット・注意点は以下の通りです。
1.スマート変更登記のメリット
(1)住所等変更登記の義務違反に問われることがなくなる
スマート変更登記の申出をすることにより、申出の後に本店・主たる事務所の住所や会社・法人の名称に変更があり、商業・法人登記について変更の登記をした場合には、申出をした不動産について登記官が職権により変更登記を行うことから、ご自身で登記申請をしなくても、義務違反に問われることがなくなります。
(2)住所等変更登記についての登録免許税がかからなくなる
住所等変更登記を申請する場合には、不動産1個につき1,000円の登録免許税がかかりますが、スマート変更登記の申出の後に本店・主たる事務所の住所や会社・法人の名称に変更があり、商業・法人登記について変更の登記をした場合には、申出をした不動産について登記官が職権により変更登記を行うことから、登録免許税はかかりません。
(3)登記情報が最新の情報に保たれる
スマート変更登記の申出をすることにより、、申出の後に本店・主たる事務所の住所や会社・法人の名称に変更があり、商業・法人登記について変更の登記をした場合には、申出をした不動産について登記官が職権により変更登記を行うことから、登記情報が最新の情報に保たれます。売買等にかかる登記に際して住所等のつながりを証明する必要がなくなり、不動産の売主等の負担軽減につながります。
2.スマート変更登記の注意点
(1)スマート変更登記の申出をした場合でも、タイムリーに登記に反映するわけではない
商業・法人登記について住所・名称の変更登記があった都度、会社法人等番号を検索キーとして不動産登記システムに通知がなされ、登記官が職権により「順次」住所等の変更登記を行うことから、住所等の変更がタイムリーに反映されるわけではありません。したがって売買などの前提として住所等の変更登記を急ぐ場合には、従来どおり登記申請を行う必要があります。
(2)平成24年5月20日以前に住所等の変更があった場合には追加の書類が必要となる場合がある
平成24年5月20日(外国会社にあっては平成27年3月1日)以前の法人の登記においては、組織変更や他の登記所の管轄区域内への本店の移転の登記等をする場合には、会社法人等番号が変更されていました。したがって、所有権等の登記がされた日が平成24年5月20日以前である場合には、変更の経緯を確認することのできる書類(閉鎖事項証明書等)の提出が必要になる場合があります。
(3)スマート変更登記の対象となる不動産は、申出をした不動産に限られる
スマート変更登記の対象となる不動産は、申出をした不動産(会社法人等番号が登記された不動産)に限られることから、それ以外に所有する不動産についてもスマート変更登記の対象としたい場合には、改めて申出をする必要があります。
スマート変更登記の申出をすべき法人
スマート変更登記は不動産を所有される多くの法人が利用すべき画期的な制度といえますが、特に以下の法人はスマート変更登記の申出をされることをおすすめします。
1.将来的に住所移転・名称変更を予定している法人
将来的に住所移転・名称変更を予定している法人については、本店・主たる事務所の住所や会社・法人の名称を変更するたびに住所等変更登記を行う義務が発生します。スマート変更登記の申出をしておけば、商業・法人登記について住所・名称の変更登記があった都度、申出をした不動産について登記官の職権による変更登記がなされるので、義務違反に問われることがなくなります。
2.不動産を複数所有する法人
不動産を複数所有する法人については、本店・主たる事務所の住所や会社・法人の名称を変更をした場合には、所有するすべての不動産について住所等変更登記を行う義務が発生します。特に複数の登記所の管轄区域内に不動産を所有する場合には手続面・コスト面でも大きなご負担となります。スマート変更登記の申出をしておけば、商業・法人登記について住所・名称の変更登記があった都度、申出をした不動産について登記官の職権による変更登記がなされるので、義務違反に問われることがなくなります。
スマート変更登記の申出を司法書士に依頼することもできます
スマート変更登記の申出は、「オンライン」または「書面」にて手続きを行うことができますが、これを司法書士にご依頼いただくこともできます。
・業務が繁忙な方
・不動産を複数所有しており、漏れなく手続きを行いたい方
・お手続きに不安のある方
はぜひお近くの司法書士までご相談ください。